自由法曹団京都支部

若い人が沢山来た憲法集会

弁護士  渡辺輝人
日時:
2006年11月12日(日) 午後1時30分〜4時30分(1時開場)
場所: シルクホール(京都産業会館)四条烏丸西入南側
主催: 11・12憲法企画実行委員会
内容: 第1部:講演 香山リカさん(精神科医)
「いまどきの『常識』〜憲法・格差・愛国心〜」

第2部:ディベート
「憲法9条 変える? 変えない? 徹底討論 決めるのはあなた!」
1. 企画の外形
 11月12日、団の弁護士、学生、働く若い人、年金生活者、労働組合職員など様々な人が集う「11.12企画実行委員会」が主催して、「香山リカ いまどきの『常識』〜憲法・格差・愛国心〜」副題:「なんとなく考えているあなたへ」というタイトルの憲法集会を行いました。内容は、第一部で精神科医の香山リカさん(帝塚山大学教授)が講演し、第二部では龍谷大学法科大学院教授の森英樹先生をコーディネーターに迎えて「変える!?変えない!?憲法9条 決めるのはあなた」と題して、憲法9条改憲の是非についてディベート(模擬討論)をおこない、第三部では再び香山さんが第一部の講演に関する会場からの意見、第二部のディベートの結果などをふまえながら、まとめの発言をしました。
 11月3日に5000人規模の憲法集会が開催された直後で、入場料大人800円、大学高校生500円と有料であったにも関わらず、会場が一杯になる500人が参加し、集会は成功裏に終了しました。そして、特筆すべき点は集会参加者の内3割以上は10代〜30代と思われる若者であり、よくある憲法集会の参加年齢層とはかなり違った年齢構成だったことです。
2. 当日まで
最初から若い人たちが沢山来る集会を目指しました。弁護士の個人的なつながりを活用して学生に来てもらい、また大学9条の会の学生や平和サークルをやっている若い人や労働組合の若い専従職員などに声をかけてできあがった実行委員会の中心は10代〜30代の若い人たちでした。そこへ経験豊富なベテラン弁護士や労働組合幹部、年金生活者が加わることで、若手を中心としながらも厚みのある実行委員会になりました。議論の当初から集会に若者を呼ぶために「結論を押しつけないで考えてもらう集会」「参加型」「格差社会」「楽しい集会」などのキーワードを設定して議論を進めました。イメージとしては『マガジン9条』(http://www.magazine9.jp/index1.html)のHPのような集会にしたかったのです。
3. 広報
 ポスター・チラシも作成しましたが、ポップな絵、香山リカさんの写真、パステルカラーの色彩、憲法集会であるにもかかわらず「憲法」の字はサブタイトルのみなど、とても親しみやすい図柄であったせいか、学生がケンタッキーフライドチキンやauショップ(携帯電話の販売店)にポスターを掲示してもらい、大学当局が学生部にポスターを掲示してくれるなどにわかには信じがたい事態が起きました。また集会直前には各大学の門前でチラシの配布もしましたが非常に受け取りが良かったです。ポスター・チラシも見た目が勝負の時代のようです。
 また、今回の集会では、マスコミへの働きかけも重視しました。新聞各紙は集会の企画の目新しさに反応し、朝日、読売、毎日(写真入り)、京都の各紙が事前報道をしてくれました(産経は未確認)。また、京都リビングという地域情報紙が香山リカさんの写真入りで集会の告知をしてくれました。 これらの広報が功を奏し、当日券が150枚も売れました
4. 香山さんの講演
 私は楽屋でディベートの準備をしていたため香山さんの講演は全く聴いていないのですが、香山リカさんの講演は現状への漠然とした不安感が改憲世論に結びついている現状を告発する内容で、参加者、特に若い人や集会慣れしていない参加者にはとても好評だったようです。一方、従来からの憲法集会に参加していた方々からは物足りない、という感想も聞かれました。
5. ディベート
 第二部のディベートは、実行委員のメンバーが改憲派(チームカラー赤)、護憲派(チームカラー青)各4人ずつが「今、憲法9条を変えるべきである」というお題で討論をしました。最後には集会参加者に色紙を上げてもらって勝敗の判定を行いました。
議論が迷走することを防ぐために双方の立論を交換して論点整理をしましたが、護憲派勝利のための筋書きは作らない「ガチンコ勝負」でした。実際の護憲論と改憲論の間の議論を反映して、議論がかみ合わない部分もあり、コーディネーターの森英樹先生のお力に全面的に依拠することになりましたが、白熱した討論と森先生のだじゃれに会場も大いに沸きました。また、丁々発止の議論の他に、護憲派、改憲派から1名ずつが出て4分間自由にしゃべるコーナーを設けましたが、護憲派の方(実行委員会唯一の戦中派でした)が自らの戦争体験をふまえた上で「私は平和憲法に生かされました。だから憲法9条を変えないでください」と訴えたときには会場に大きな感動に包まれました。若い世代に戦争体験を聞いてもらう形としても成功したと思います。
 会場の判定は7:3で護憲派勝利でした(私は改憲派論客だったのですが改憲派はかなりがんばったと思います)。参加者からは「面白かった」「真剣に考える機会が得られて良かった」等とても好評で、「改憲派の疑問に答えられるようにならなければ護憲派は勝てないと思いました」という前向きな意見も寄せられました。今回は護憲派が勝ちましたが、コーディネーターがしっかりまとめをすれば、必ずしも護憲派が勝つ必要はないと思いました。
6. IT技術の活用
 ディベートについてもう一点特筆すべきなのは集会参加者も携帯電話を使って討論に参加した点です。会場に大きなスクリーンを配置してパソコン画面を大写しにし、パソコンはインターネット上のあるチャット板に接続します。一方、集会参加者にはチャット板のアドレスを告知しておき、集会参加者が携帯電話でチャット板に意見を投稿すると、リアルタイムでスクリーンに意見が表示されるわけです。携帯電話を使えない方には紙に意見を書いていただき、実行委員がパソコンで打ち込みました。その結果、1時間あまりの間に69回もの書き込みが行われました。50代の方も携帯電話での書き込みをしてくれました。壇上の議論と平行して参加者が意見を述べられるシステムは非常に好評でした。
 また、当日は香山さんへの質問を携帯電話のメールでも受け付けました。これも好評で多数の質問が寄せられました。香山さんにはメールを含めた会場の意見をふまえた上で最後のまとめの話をして頂いたので、意見を素早く集計できるメールはとても効果的だったと思います。 チャット板のアドレス(URL)、香山さんへの質問を受け付けるメールアドレスについては単に紙にアドレスを書いて告知するだけではなく携帯電話のカメラで読み込むとアドレスが携帯電話に表示されるバーコード(QRコード)も作成して配布しました。これにより手軽にアクセスできるようになり、多くの人が携帯電話で意見を投稿してくれた原因になったと思います。
7. 評価
 企画段階では、弁護士からも「香山リカさんでは護憲派の確固たるメッセージを打ち出せない」「護憲派が負けるかもしれないディベートをやるべきではない」という意見がでました。しかし、集会参加者に問いかけ考えさせる香山さんのしゃべり方や会場の参加者が議論を聞いて自分で結論を出すことを求められるディベートは憲法集会にはじめてくる層や若い人たちの心情にはフィットしていたと思います。そして、集会終了後は護憲派の方からも「若い人が沢山来て未来に希望がもてる集会だった」という評価が多く聞かれました。また、集会参加者の多くが改憲派との対話の重要性を認識したことも大きな成果だったと思います。 今、ネット上では改憲派の方が優勢です。彼らはネット右翼などと蔑称されますが、ちょっと議論してみると彼らなりに真剣に勉強していることが分かります。これからの護憲派に求められるのは、彼らのように素朴な思いから改憲論を唱える人たちと対話し、自分たちの意見を押しつけることなく説得していく能力なのではないかと思います。今回の集会は、対話する護憲派、若い世代への訴える力がある護憲派へと脱皮するためのヒントになったと自負しています。
2006年12月24日 更新