自由法曹団京都支部

意見書・決議・声明

自衛隊の違憲・違法な国民監視活動に強く抗議する
  1.  2007年6月6日、自衛隊情報保全隊が、日常的に国民の動向を監視し、その情報を系統的に収集・分析していたことが明らかになった。
  2.  文書は、2003年12月から2004年3月までの間に、陸上自衛隊情報保全隊が作成したもので、自衛隊イラク派兵反対の運動など、個人や団体による幅広い行動等の情報が掲載されている。多数の市民が実名で記載され、デモや集会の写真も掲載されている。自由法曹団などが呼びかけて2004年2月5日に行った「ピースキャンドルナイト」も取り上げられ、「防衛庁前を通過する4,650名のP系団体」とのタイトルで4枚の写真が掲載されている。
     監視の対象は、「医療費負担増の凍結・見直し」・「消費税増税反対」・「国民春闘」の運動や「小林多喜二展」の取り組みなど、およそ自衛隊とは関係ないものにも及んでいる。「市街地における反対動向」として監視の対象とされた団体・個人は、映画監督の山田洋次氏らの著名人をはじめ、全国41都道府県、289団体・個人に上る。マスメディアの動向、地方議会での反対決議の状況、国会議員の発言、宗教団体の活動なども監視されていた。京都府内においても、「STOP!イラク派兵反対・京都」などの5つの団体が監視の対象とされていた。
     しかもこの文書には、個々の活動や集会の参加人数、時刻、発言内容等が克明に記され、日本共産党系(P系)、社会民主党系(S系)、民主党及び連合系労働組合などと「区分」して集約された上、「反自衛隊活動」などとレッテルまで貼られていた。
     2002年に自衛隊に対して情報公開請求をした人を、当時の防衛庁が密かにリストアップし内部で閲覧していたことが発覚した際には、官房長が処分されるなどの措置がとられたが、今回の監視活動はおよそその比ではない。
  3.  このような自衛隊による国民監視活動について、塩崎官房長官は「法令の許容範囲であれば許される」などと述べた。
     しかしながら、自衛隊情報保全隊は、自衛隊の保有する内部情報の流出や漏洩を防止するのがその任務である。国民に対する捜査権限もなければ、監視、調査の権限もなく、国民への監視活動は、自衛隊法に明確な根拠のない違法行為である。
     また、収集された情報には、明らかな個人情報、とりわけ思想信条に関わるいわゆるセンシティブ情報が多数含まれており、こうした監視活動は、憲法が国民に保障している言論・集会・結社・表現の自由、思想・信条の自由、プライバシー権、肖像権等を著しく侵害するものにほかならない。
     戦前の軍国主義の下では、軍隊内の警察機関であった憲兵隊が国民を監視しその自由を抑圧していった。軍隊は内に向かっては国民抑圧の尖兵となる危険性を常に秘めているのである。憲法を改正し、自衛隊を自衛軍にしようとしている今、この歴史の教訓を忘れてはならない。
     国内において国民のあらゆる運動を監視下におき、系統的に情報を収集・分析する目的は、政府や自衛隊に批判的な思想・信条、言論・表現を抑圧、弾圧すること以外には考えられない。自衛隊という「実力」によって、国民の基本的人権を抑圧しようとすることは、戦前の「暗黒政治」を復活させるものであり、現憲法下では絶対に許されない暴挙である。私たちは、これに強く抗議する。
  4.  今回、明らかになったことは自衛隊の活動の一端に過ぎまい。自由法曹団京都支部は、政府に対し、自衛隊情報保全隊による国民監視活動の全容を明らかにするとともに、違憲・違法な国民監視活動を直ちに中止することを強く求めるものである。     

2007年6月7日
自由法曹団京都支部
幹事長 村井 豊明
事務局長 福山 和人