自由法曹団京都支部

意見書・決議・声明

2007年11月7日
各 位
拡声機規制条例改正案に対する意見書

自由法曹団京都支部
  幹事長 弁護士 村井 豊明
  事務局長 福山 和人

  1.  京都府警察本部は、「『拡声機による暴騒音の規制に関する条例の一部を改正する条例(案)』の概要」を発表し、現行の拡声機による暴騒音の規制に関する条例(以下、拡声機規制条例という)につき「1.換算測定方法の導入」、「2.拡声機使用停止命令規定の新設」、「3.複数の者による拡声機の同時使用に対する移動命令規定の新設」、以上3点の改正を行う旨表明し、現在パブリックコメントを募集している。
     拡声機規制条例は、拡声機を使用する表現行為(市民の健全なる政治活動としての宣伝活動等)に対して規制を行うものであり、憲法21条が定める表現の自由を侵害する虞のある条例である。改正案は、かかる規制を強化するものであり、自由法曹団京都支部は、今後改正条例案が具体化されるに先立ち、同改正により市民の正当な表現の自由が不当に侵害されることがないよう、以下の意見を表明する。
  2. 換算測定方法の導入に関して
     現行制度では拡声機から10メートル離れた地点において暴騒音測定を行うこととしているが、改正案においては10メートル以内の地点における測定を可能とした上、10メートル離れた地点で測定した音量に換算して暴騒音と認定することを可能としている。
     仮に、道路の構造や建造物などの制約の関係で上記の新しい測定方法を導入する必要があるとしても、誤った測定を防止するために具体的な測定方法や測定器の性能等についての説明が必要である。これらの説明や情報開示がないまま条例を改正をすべきではない。至急これらの説明と情報を公表した上でパブリックコメントを求めるべきである。
  3. 複数の者による拡声機の同時使用に対する移動命令の新設について
     現行制度においては、2人以上の者が同時に近接した場所でそれぞれ拡声機を使用した結果暴騒音が発生しているときに、警察官が当該拡声機使用者に対して暴騒音の発生を防止するための必要な措置をとることを勧告できるとしているところ、改正案においてはかかる勧告に従わず引き続き拡声機を使用して暴騒音を発生させている者に対して警察官はその場からの移動を命じることができ、従わない場合には6月以下の懲役又は20年以下の罰金を科しうるとするものとしている。
     しかしながら、この改正案については重大な問題がある。京都府警察本部は2005年のブッシュ大統領来訪時における抗議街宣の競合を例に挙げて本改正点の必要性を強調しているが、これには市民団体が行っていた街頭宣伝の場所に右翼団体の街宣車が大音量で近づいてきたという事例も入っている。改正案によれば、単独では暴騒音を発生させずに行っている市民団体の街頭宣伝の場所に大音量を発している右翼団体の街宣車が近づいてきた場合、右翼団体の街宣車だけでなく、市民団体の宣伝カーにも移動命令を発することができるようになってしまう。これは、市民団体の表現の自由に対する著しく不当な制限となる。
     従って、このような場合でも暴騒音を発生させている者を特定した上で、暴騒音を発生させている者に対してのみ移動を命じうるという内容に限定するべきである。そうでなければ、暴騒音を発生させていない市民団体の表現の自由に対するいわれのない不当な制限となってしまう。しかも、平穏な街頭宣伝を妨害するために、街宣車がわざと暴騒音を発して近づき、警察に平穏な街頭宣伝を行っている者に対する移動命令を発せさせるということに悪用されてしまう。
  4.  拡声機を使用した表現行為は、正当な市民の政治活動にとって重要なる手段である。これを規制する拡声機規制条例の内容は務めて表現の自由などの国民の権利を不当に侵害しないようなものでなければならない。今回の改正案は上記の通り正当な市民の表現行為を不当に規制する可能性が極めて高いものであるので、自由法曹団京都支部は今回の改正案に断固として反対するものである。

以上