●「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律の一部を改正する法律案」
の廃案を求める意見書
2006年4月28日
自由法曹団京都支部 |
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幹事長 |
村井 豊明 |
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事務局長 |
福山 和人 |
- 政府は、本年3月13日、「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律の一部を改正する法律案」(以下「未決拘禁法案」という)を国会に提出し、4月18日には、衆議院本会議において、自民、公明両党などの賛成多数で可決され、参議院に送付された。
しかしながら、未決拘禁法案には、下記のとおり、えん罪の温床とされる代用監獄を存続させ、恒久化させるおそれがあるなどの問題点がある。自由法曹団京都支部は、未決拘禁法案が参議院において廃案とされることを求めるものである。
- 未決拘禁法案は代用監獄を恒久化させる法案である
未決拘禁法案においては、14条2項2号において、被勾留者の収容施設として留置施設、すなわち警察留置場を明記している。これは、旧監獄法1条3項において「留置場ハ之ヲ監獄二代用スルコトヲ得」と規定され、あくまで代用施設とされていた警察留置場に法的な根拠を与えるものであって、代用監獄の施設としての恒久化につながるものと言わざるを得ない。
この点、未決拘禁法案は、15条1項において「刑事施設に収容することに代えて、留置施設に留置することができる」と規定し、収容権限の代替性を定めているが、上記のとおり、警察留置場に被勾留者の収容施設としての法的根拠を与えた上でのものであり、代用監獄の恒久化という根本的な問題は何ら解消されるものではない。
そもそも、代用監獄については、身柄を拘束する機関と捜査を行う機関とが同一であるが故に、長時間あるいは深夜に及ぶ取り調べが可能になり、24時間監視の下で、暴行・脅迫など違法な手段をもって自白の強要が行われるなどしてきたことから、えん罪の温床とされてきたのである。過去、日本における4件(免田事件、財田川事件、松山事件、島田事件)の死刑判決が確定した事件においては、いずれも30数年かけてようやく再審で無罪判決が言い渡され確定している。これらの再審無罪判決はいずれも、捜査の過程、特に代用監獄に収容されている間になされた自白に問題があると指摘している。昨年9月に再審開始決定が出された布川事件においても、代用監獄に収容されている間に強要された自白には信用性がないとしている。
また、国際的にも、国連人権(自由権)規約委員会は、日本の代用監獄は国際人権規約B規約に違反すると指摘し(1988年)、2度にわたって代用監獄の廃止を含む改善勧告を行っている(1993年、1998年)。犯罪捜査と拘禁との明確な分離は、国際的に確認された大原則である(1959年国際法曹委員会ニューデリー大会宣言、1979年国際刑法学会ハンブルク大会決議、1979年国連・国際人権規約B規約9条3項前段、1988年国連被拘禁者人権原則など)。従って、代用監獄を存続・恒久化させる未決拘禁法案は、犯罪捜査と拘禁の分離という近代的・国際的大原則に反するものである。
この点、未決拘禁法案においては、留置業務に従事する警察官は被留置者の「人権に関する理解」を深めなければならないと規定し、また、留置担当官は「犯罪の捜査に従事してはならない」と明記して捜査と留置部門を分離するなどといった運用改善策が定められている。しかし、警察は、1980年より捜査と留置を分離する取り扱いを行っているとしながら、実態としては捜査が優先され、自白の強要が後を絶たない。従って、かかる運用改善策が定められたとしても、代用監獄の弊害について、何ら根本的な解決とはならない。
- 弁護人との接見交通権を侵害するおそれのある法案である
未決拘禁法案においては、219条において、留置施設における弁護人との接見について、面会の一時停止及び終了を規定し、220条において、面会の日時について原則として「留置施設の執務時間内」に限定され、弁護人等から執務時間外の面会の申し出がある場合においても「留置施設の管理運営上支障があるときを除き、これを許すものとする」と規定している。これは、弁護人と被疑者・被告人との接見を制限する新たな根拠となる規定であり、接見交通権の侵害となる規定であると言わざるを得ない。
そもそも、接見交通権とは、国家権力によって身柄を拘束された被疑者・被告人にとっては、自らの防御権を現実のものとするため、弁護人にとっては、捜査機関を監視し、被疑者・被告人の権利を擁護するための重要な権利であり、その重要性に鑑みれば、何ら制限を加えることは許されないというべきである。特に、自白の強要を防止するためには、警察留置場での弁護人との接見が極めて重要である。しかるに、未決拘禁法案の上記各規定は、警察による、接見交通権に対する新たな制限の根拠となりうるものであって、決して看過することはできない。
- 禁止規定、防声具・拘束衣・保護室の使用について
未決拘禁法案では、213条、214条において、留置施設における防声具・拘束衣の使用や保護室への収用を認め、また、190条、208条においては、自弁の嗜好品と一定の書籍について3日を超えない期間に限り禁止できるとの禁止規定を設けている。
上記禁止規定は実質的な懲罰に該当し、加えて、防声具・拘束衣の使用や保護室への収用を認めることは、被疑者・被告人等への不利益な措置として、自白強要や拷問の手段として利用されるおそれがある。
- 以上のとおり、現在、参議院で審議されている未決拘禁法案については、憲法・刑事訴訟法等で保障された国民の基本的人権を侵害する危険性が極めて高く、自由法曹団京都支部は未決拘禁法案の廃案を強く求めるものである。
以上
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